⑳ 国民年金の保険料支払い期間は65歳まで? 5年延長になる?ならない?

2024.10.15

 

長期的に安定した公的年金制度を維持するために、国(厚生労働省)では、国民年金の保険料納付期間を5年延長し、65歳までとする案が検討されています。

 

現状では、国民年金の加入は20歳から60歳までの40年間、すべての人に加入が義務付けられています。
※ただし、「学生納付特例」により社会人になってからの納付や「出産育児休業中の免除」が認められる場合あります。

 

40年間(480月)欠かさずに保険料納付すると、原則として、65歳になると、老齢基礎年金を満額受給することができます。

2024年度新規裁定者(新たに年金受給権を取得した人)の満額は、81万6000円(月あたり6万8000円)です。
物価および賃金の変動を加味しつつ、毎年年金額も変動します。

受け取れる老齢基礎年金の金額は、納付済月数によって計算されます。

たとえば、20歳~22歳の2年間(24月間)の大学在学中は、国民年金保険料を届出なく支払わず、23歳で就職して以降38年間(456月間)納付したというケースでは、年金受給額は、

816,000円 × 456/480 = 775,200円

で計算され、月あたり64,600円となります。

満額受け取れるケースと比較すると、3400円少なくなることに…
公的年金の魅力は、生涯にわたって受給できることなので、3400円の差は侮れません。

現役時代に会社員であった方であれば、老齢厚生年金が上乗せされますが、フリーランスや途中未納がある方の場合には。高齢期の生活をカバーできる金額には心もとない金額かもしれません。

 

そこで、保険料支払期間(=国民年金加入期間)を現行の40年から45年に5年延長することで、年金受給額を増やす案が浮上した訳です。

5年延長でのメリットとしては、
保険料の納付期間が増えることで、満額の金額が増えることが考えられます。

一方で、
60歳以降も働き続ける人は多いものの、多くの企業では、60歳以降の賃金はそれまでの40%から70%に下がるのが一般的のようです。つまり、働き続けることで給与収入は得られるものの、支給額は減額されたうえに、さらに社会保険料まで差し引かれると生活できないという可能性も考えられます。

 

厚生労働省の試算によると、5年延長することで、保険料負担は約100万円増、基礎年金の受給額は年間10万円程度増とのことです。10年長生きすればメリットを享受できるということですかね~
悩ましいです。

 

結論としては、5年ごとに行われる今回の「財政検証」では、5年延長案は見送られました!!

※「財政検証」… 厚生年金保険法及び国民年金法の規定により、少なくとも5年ごとに、国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しの作成を行っています。

高齢者や女性の就労が進んだこと、パート労働者らの厚生年金の適用要件拡大による財源確保、5年前の財政検証よりも高い運用効果が得られていることなどから国民の理解が得られないと5年延長案の撤回を判断したようです。

いつまで生きられるかが予測できない分、容易に損得が判断できないことにスッキリしませんが、今後も情勢も見守っていきたいと思います。

 

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大竹麻佐子      
ファイナンシャルプランナー(CFP) /相続診断士/整理収納アドバイザー       
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